マルガレーテンヘーエ工房の器 | スペシャルインタビュー マイク・エーブルソン(デザイナー)
様々な分野で活躍する3名の方に、マルガレーテンヘーエ工房の器について語っていただきました。
デザイン、文化、クリエイション、様々な視点からこの器の魅力に迫ります。実際に使用した際の感想や、おすすめの使い方と合わせてご紹介します。
― マルガレーテンヘーエ工房の器をずっとお使いだそうですが、きっかけは何でしょうか。
ギフトで友人からもらったのが最初かな。それから自分でも何点か買いました。
― どのように使っていますか?
フルーツを入れるときれいないい皿があったけど割れちゃった。子供が落としてしまって……家族みんなで泣いちゃいました。食器って、毎日使うものと、そうじゃないほこりをかぶったものとにはっきり分かれますよね。その割れた皿はよく使うヘビーローテーションのものだったんです。似たような皿があったんだけど、微妙なところが違っていて、どうしてもいつも同じものを使ってしまう。厚さが違うとか、形が丁度いいとか、色がいいとか、いろいろ理由はあるけれど、それって買うときは気づかないかもしれない。
― 使っていくうちに発見していく感じですか?
そう。使っていくうちに、なぜかわからないんだけどハンドルが気持ちいいなとか。買うときに全部気づくのは不可能だと思う。持って帰って一緒に暮らすとわかってくる。
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― 好きな色はありますか?
友理(奥様)はこれ(白のマグカップ)だよね。僕はこの黒いやつ(マットグリーン)。このくすり(釉薬)の色がすごく好き。ほんと見たことなくて、すごくいいなと思う。このくすりの色は1つ1つ全部違っていて面白い。焼いたときのくすりの厚さや酸素の量なのか知らないけれど、まだらな感じがいいなと思います。
― この器をプレゼントで初めてもらったときの印象はどんなものでしたか?
「 わあ、すごいカップ!」って感じじゃないところがいいよね。たまに不思議な形の「これカップですか?」みたいなのがあるじゃない。そういうのはだいたい棚の奥にいっちゃう。持ち手が四角くて持ちにくいとか。これは持ち手がクラシックで丸みがあって、最初はわからなかったけど、お湯を入れて重みがかかったときのスムースな感じがいい。最初の印象は強くないけど、使ううちに自分だけがわかる良さというのがあるよね。
先日、アメリカで買ったマグカップは薄くて軽いんだけど、お湯を入れると持ったときに熱い。薄くするのは技術はいるんだろうけど、逆に良くなかったりもする。これは厚さもそれなりにあるから保温効果もあるだろうな。
毎朝紅茶を飲むんだけど、ティーバッグを入れて丁度いい濃さになるんだよね。濃くなりすぎないし、薄くもない。小さいサイズだと、もう一杯入れたくなっちゃうけど、これが自分にとってちょうどいい大きさ。 -
― 縁が欠けてますが、愛着を感じるいい雰囲気になっていますね。
欠けちゃったのが、すごく悔しくて……。ペーパーをかければ使えるかなと思って、ペーパーをかけるのが好きなんだけど、陶器にかけたのは初めて(笑)。 -
― 今回選んでいただいた蓋付きポットは、多くの人が使い方を迷う特徴的な形ですが、使ってみたいと思われたポイントは?
料理で残り物がでたときに、ラップを使うのが好きじゃなくて。タッパーに入れると中身が見えなくなっちゃうし。プラスティックのものは電子レンジを使うとき、なんとなく害を気にしちゃう。耐熱ガラスのもあるけれど蓋はやっぱりプラスティックだし、なかなかいいのがない。オーブンでも使える陶器でそのままテーブルで使えて、保存もできるという理論的にはいいのがあるけれど、デザインがあまり気に入らない。僕、すごくうるさいんです(笑)。
でも、これだったら、このままテーブルにも出せるし、冷蔵庫に入れても邪魔にならなさそう。例えばクッキーも1日目はいいけど、その後にラップをしておくと、だんだんラップが汚れてくるのが好きじゃないし、プラスティックの容器だと美味しそうに見えない。 -
― 機能性とデザイン性が使い心地につながることが大事ですよね。
そう。これは飽きてしまうような模様はなくて、シンプルな釉薬で微妙な色がきれい。透明感のある釉薬に深みも出てくるし、何をのせてもよく見える。いい皿があれば、料理の技術がなくても大丈夫。
そして、昔のものづくりみたいに、人間の手の跡を消しすぎていないのもいい。釉薬をかけた跡とか、轆轤をひいたときの手の指の跡とか。そういう跡を残していて、余計なディテールを入れていない。消そうと思えば消せるけど、意識して残してるんじゃないかな。そういうのがすごい。それに、和でも洋でも使えるのもいい。
― この工房はドイツにあるのですが、アートディレクターが韓国出身の方なので、それぞれの特徴をうまく組み合わせて私たち日本人にとっては使い易いものになっていると思います。
韓国の陶器の歴史も面白いよね。以前サムスン美術館リウムに行ったんだけど、今まで韓国の食器はグラフィックが強いイメージがあったけど、歴史的なものを見ると、こういうセラドンみたいな繊細な色味もあってきれいだった。この工房の器は韓国的な色味を残しながら、洋の形にもなっていて面白い。 -
― マイクさんが普段ものを選ぶときのポイントには何がありますか? つい手に取っちゃうものとか、直感的に選ぶものとか。
1つの素材だけで作られているものに弱いかな。素材を組み合わせていないもの。ものを作るときにいろんな素材を組み合わせて作るより、1つの素材だけで作るほうが難しいと思う。このまえは木だけで作られたレモンスクウィーザーを買っちゃった。
それから、お店のサンプルが壊れていないことが大切。いいなと思ってもサンプルが壊れているということは、いずれこうなると思ってしまう。あとはお店の人とよく話してから買うことが多い。自分が見てわからないことを聞けるとうれしいし、デザイナーよりよく知っているんじゃないかな。その3つですね。
― ものを選ぶときに実際の使用感やどう変化していくかを知ることは大切ですよね。いつも使っている器はどういうものが多いですか?
義理の母が陶芸をやっていて、彼女が作ったものや子供が作ったものも使っています。漆とか日本の古いものも。実は高校生のとき陶芸部だったんだよね。だからこの工房のいろんな形の器を見るとすごいなって思う。自分では作れないなって。それに同じ色・形でも、ひとつひとつ微妙に違うところもいいよね。李さんや工房スタッフの方に是非会ってみたいね。 -
Photo by Kaori Nishida
マイク・エーブルソン
2000年にニューヨークのブルックリンで、妻のエーブルソン友理さんのために作った書類ケースがきっかけとなり「POSTALCO」を設立。拠点を東京に移し、機能的でありながらあたたかみがあり、永く使えるステーショナリーやバッグなどを製作。 -
スペシャルインタビュー 泊 昭雄 www.livingmotif.com/news/160916_02
スペシャルインタビュー 平松 洋子 www.livingmotif.com/news/160916_03
マルガレーテンヘーエ工房の器 9月16日(金)〜10月16日(日)イベント詳細ページ
www.livingmotif.com/news/160909_01
オンラインショップでのご購入
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