ガラス作家、辻野剛氏の個人工房からスタートしたfresco。20年以上のガラス工芸技術の実績を礎に、2005年に立ち上げられたブランドです。日常的に手作りガラスを使う生活を啓蒙し、日本人の暮らしに沿うガラス作品を提案することを目的として活動しています。工房で行われるワークショップには、ガラスを学ぶ人以外にもデザイナーの参加も多く、ガラスという素材について知ることのできる場を広く提供しています。
工房を訪問して作品が生まれる現場を体験しながら、ガラスを通して多彩な表現に挑戦するfrescoの考えるガラスについてお話を伺いました。

様々な作品が生み出される工房

- 灼熱の工房で吹きガラスに挑戦。
8月上旬、夏真っ盛りの時期に大阪・和泉市にある工房を訪問。予想はしていたものの、1200℃を超えるメインの溶解炉は近づくのもためらうほどの熱気。1.9Mシリーズの制作を見学しながらグラス作りの流れを教わります。さすがのチームワーク、あっという間に見慣れた形に仕上がっていきます。
いよいよ風鈴作りに挑戦。溶解炉からのガラスの巻き取りは、吹き竿の重さと炉の熱気ではじめから苦戦、一気に汗が吹き出ます。(この作業は危険なため通常はおまかせのところ、特別に体験させていただきました。)
表情を持たせるために2色のガラスパウダーを使用。水を良く含ませて幾重にも重ねた新聞紙での形成は、グローブの上からでもガラスの熱さを手に感じます。息を吹き込んで膨らます、再度ガラスを巻く、形を整える、冷えないよう高温の炉に入れて溶かしてからまた吹く・・・と、難しい作業はお手伝いしていただきながら作業を進めていきます。
特に難しかったのは、最終的な形に大きく影響する口を広げる工程。重力でガラスが垂れて形が歪まないよう常に竿を回転させながら、道具を差し込んで内側から少しずつ穴を広げていきます。躊躇しているとガラスが冷めてしまうので、慎重に、でも思い切って。
なんとか形にして一通りの工程を終了、細かな仕上げはおまかせして出来上がりです。常温で冷ましてしまうと急激な温度変化によるストレスで割れてしまうため、徐冷炉という500℃弱の炉内に入れて12時間以上かけてゆっくりと温度を下げていきます。
後日、丁寧に梱包されて完成品が到着(ありがとうございます!)。ひとつひとつ、一瞬の作業の差で形や表情が変わってしまう、ガラスを通して表現することの難しさを実感した貴重な体験となりました。
- 自然を表現することでガラスに現れる表情
frescoの製品と辻野氏のアート作品に共通するコンセプトは、ガラスという素材を自然のモチーフ(あるいはイメージとして)に近づける作業を行い、結果として現れる表情を作品の要素として表現していくこと。ガラスとしての表情をどれだけ残し、または加えながら、どれだけ自然の姿を取り入れるかが大きなテーマと言えます。
製品もシリーズごとに自然のモノやコトからインスピレーションを受け、それぞれに異なった手法で表現されています。
■1.9M(イッテンキュウエム)
石庭で有名な京都龍安寺の土壁の高さ1.9メートルがシリーズ名の由来。龍安寺の土壁は、縁台に座り真っ直ぐに視線を送ると、ちょうどその高さに壁と外側に見える景色の境目が来るように設計されています。庭を設計した人が庭そのものを「器」と捉え、周りの環境とその内側との関係性に配慮した日本人らしさ、このアイデアをガラスに映した作品です。
2色のガラスパウダーを使い、2段階に着色していくことで層を表現。表面の色は温度変化と酸化、還元炎の調整で変化させています。
■kasumi(カスミ)
日本という土地を覆い込む空気は、秋の一時を除いて概ね湿度を含んだベールのようなもの。それを意識するのはかなり距離の離れた対象物を見た時に気づく、自分と対象の間に介在する「何か」。空気中に含まれる物がぼんやりと存在することで、空気や光を意識させます。この空気を含んだ「何か」を表現した作品。
2色のガラスパウダーを使用。制作途中でランダムに面を作り、ガラスの厚みを所々変えてから吹き上げていくことで、仕上げた時に形がいびつになるよう制作されています。

上:アート作品が並ぶショールーム
中:1.9Mシリーズ
下:kasumiシリーズ

- 日本人の暮らしに沿ったガラス
ひとつひとつハンドメイドで作られるガラスは、それぞれが個性を持ち、使い手がそれを個人の感性で選択する。frescoは、作り手の「表現」と使い手の選ぶことでの「表現」、完成されるものはコラボレーションと考え、ガラスを通じて人と人との関わりを最も大切にしています。
frescoの考えるガラスの存在とは、「空気を醸し、光を見せ、存在を意識させる。でも、静かに空間の中でその役割を果たすもの」。
融けあう色彩の中に日本の空気や佇まいが写し出される製品やアート作品は、私たちの暮らしの中にすっと入り込み静かに寄り添う、そんな存在となってくれるでしょう。
fresco —融けあう吹きガラスの色彩—
2009年10月3日(土)〜30日(金)リビング・モティーフ1Fにて
期間中は六本木のリビング・モティーフ店舗でも、器やグラスなど暮らしに沿うガラス作品の展示・販売をいたします。オンラインショップにはない辻野氏のアート作品も多数展示、今回のイベントに向けて制作された新製品も販売いたしますので、この機会に是非お立ち寄りください。










