マルガレーテンヘーエ工房の器 | スペシャルインタビュー 泊 昭雄(写真家) 16.09.15

マルガレーテンヘーエ工房の器 | スペシャルインタビュー 泊 昭雄(写真家)

様々な分野で活躍する3名の方に、マルガレーテンヘーエ工房の器について語っていただきました。
デザイン、文化、クリエイション、様々な視点からこの器の魅力に迫ります。実際に使用した際の感想や、おすすめの使い方と合わせてご紹介します。


― マルガレーテンヘーエ工房の食器はご存知でしたか?
知らなかったです。初めて見たときは韓国だなあと思った。工房の名前を聞いてすぐにホームページを見ましたが、昔のDANSKっぽいなと。すごくDANSKの食器が好きだったので、DANSKの曲線版だなあと思いました。色や質感も近いなって。

― 普段から食器はお好きですか?
好きですよ。好きだけど、何でもいいかな。家ではすべてローゼンタールで、白を使っています。料理が映えるから。

― 何でもよくはないですね(笑)。ジャスパー・モリソンのムーンシリーズですか?
そう。コーヒーカップとプレート、あの曲線が好きなんです。

  • ― 韓国っぽいと思われたのは色からですか?
    色もそうですし、形が民芸っぽい。昔、撮影の小道具として器を探していたときが、ちょうど韓国民芸のブームで、そのときに見つけた器がこんな色でした。でも、こんな色をよく出せますよね。

    ― この工房のアートディレクターの李さんは、自身ではアーティストとしてヨーロッパのギャラリーや美術館などで個展をされていますが、やはり色彩の世界観がすばらしいんです。
    実は僕、陶芸家を目指しているんです。2020年までは写真を撮り続けるけど、その後は陶芸家になりたい。それで今から勉強しようかなと。アシスタントが陶芸出身なので、今、色々聞いているところです。

    写真を撮っていると、この釉薬のツヤに色々なものが写り込むのが苦手なんです。テーブルの真ん中に置いたときに周りの食器が写り込むのも大嫌い。だから僕は中に釉薬を放り込みたい。表はそのまま。それは難しいと釘を刺されているんですけど……。

    ― そうなんですね! すごく楽しみです。泊さんがどんな色で何をつくられるのか。
    僕の場合、色はないと思います。白かクリーム。その代わり、中に色を足します。種類も1つだけ。昔、田舎には必ずみかんや果物が入った器がダイニングにありましたよね。あれをつくりたい。それがあるだけで、家の中があたたかく感じるような。最近はあまり見ませんけどね。そんな器を作りたいんです。無彩色がいいかなと思っているので、この色は参考になりますよね。

  • ― 今回選んでいただいたピッチャーとカップのどんなところが好きですか? ピッチャーに活けた花がよく映えていますね。
    色ですね。このカップの白が外側でグリーンが内側だったらもっといい。この花は近所で咲いていたものを活けました。野花が好きなんです。

    ― スタイリスト、写真家というクリエイションをされてきて、次に陶芸を選ばれたのはなぜですか? いつぐらいからあたためてきたんですか?
    スタイリストとして独立した後、最初は椅子を作りたいと思ってジョージ・ナカシマを追いかけてアメリカに行ったんです。紹介状を書いてもらってロスまでは行ったんですが、途中で荷物を盗られちゃって、たどり着かなかったんです。それであきらめた。

    次に目指したのが陶芸です。何か形を作りたくなったんでしょうね。以前『hinism』という雑誌を作ったとき、最初に会いに行ったのが黒田泰造さんだった。そこで黒田さんが器を作る姿を見てしまって、以来、いつかチャンスがあればと思っていました。

  • Photo by L.A.Tomari

    ― 今回、泊さんにはこの器を撮影していただきました。レンズ越しに、いつもどんなことを考えていらっしゃるんでしょうか?
    僕はモノから入ってきている人間なので、どんなモノがきても、その世界を取り出すように撮りたいと思っています。要するに、安いグラスであっても上品に生まれ変わるのが、僕の写真の撮り方なんです。そう自分に言いきかせています。

    今回こういう構成にしたのは、その形を上品な世界に持っていくためにはどうしたらいいかを考えて、主役が絶対ひとり必要だと思ったから。それがこの滲み方なんです。フォーカスの当たっていないところには滲みをかけています。
    形と色がわかればいいじゃないかと。ひとつものが見えていれば、あとは想像できるでしょ? それが僕の発想の仕方かな。人間を撮るときも、目だけにフォーカスを当てて、あとは形で、女性なのか男性なのかが見えてくるはずだし、滲んでるほうが醸し出しますよね。

  • Photo by L.A.Tomari

    ― 撮影に立ち会わせていただいて、たっぷりの自然光の中で撮った写真には、光だけでなく空気も写っているような気がしました。この醸し出す雰囲気が素敵ですよね。
    絶対大事です。スタジオをライティングするときも、自分が家にいるような環境でないと。カーテンでもピシッとするとかドレープをきれいに作るとか、空間を後ろから見るような感覚。スタジオでも空間がきれいじゃないとだめ。それがいちばん大事なこと。写真には写らない周りの環境も空気となって写っているんです。

  • ― 泊さんのものや空間の捉え方をうかがっていると、モノの魅力にたどりつくのがきっと早いのだと思います。
    それは自信あります。迷い出すと良さが見えてこない。迷うことがいちばん嫌いなんです。だからすぐ決断しちゃいます。そうしないと前に進めないので。僕の場合は、「見る」というより「視る」という感覚です。見るんだったら徹底的に見る。そして見た限りは好きになる。だから迷わないし、良さにたどりつけるんだと思います。

    ― 好きになれないものはどうするんですか?
    好きになれないものは見ません。ディスプレイは好きだから細かく見ますし、こうすればもっときれいなのにとか常に考えるようにしています。その中で嫌いなものは見ないようにしています。というか見えてこない。常に美しいものにしたいと思っていますが、美しいものというよりは“上品”といったほうがいいかもしれない。写真も絶対上品なものにしたい。

  • ― 配慮とか精神性とか、いろんなものが「上品」につながっている気がします。
    上質は好きではないです。上質は時間をかければできるような気がします。上品のほうが僕の感性ではハイレベルですね。上品は体に染み込んで出るものだから。

    ― 見えない手順や配慮が大事なんですね。マルガレーテンへーエ工房では、常に自分たちの器を使い、制作から梱包まで全て自分たちの手で丁寧に行っています。そういう想いが商品から皆さんに伝わればといいなと思います。


    Photo by Kaori Nishida

    とまり・あきお
    1955年鹿児島生まれ。大阪で育つ。スタイリストとして独立後、並行して写真の仕事も始め、のちに写真家へ転身。2004年には自身がクリエイティブディレクターを務めた不定期刊行誌「hinism」を創刊しADC制作者賞受賞。

  • スペシャルインタビュー マイク・エーブルソン www.livingmotif.com/news/160916_01
    スペシャルインタビュー 平松 洋子 www.livingmotif.com/news/160916_03

    マルガレーテンヘーエ工房の器 9月16日(金)〜10月16日(日)イベント詳細ページ
    www.livingmotif.com/news/160909_01
    オンラインショップでのご購入
    shop.livingmotif.com/list/brand/181